英語翻訳時に本当に必要な日本語力
英語の翻訳に必要なのは日本語の能力です
皆さんが翻訳を行おうと考えたとき、必要になる能力はどんなものだと思いますか?
英語を読むことができる力、文章を読み解く力、その分野の専門知識など、様々なものが思い浮かぶでしょう。当然これらのことも重要ではありますが、忘れてはいけないのは「日本語力」です。
「日本語力」とは、一般的には日本語を読む能力、書く能力、話す能力と言われています。実は翻訳をしっかりと行う場合には、この「日本語力」の存在が必要不可欠なのです。
1. 映画の翻訳にみる「日本語力」
近年、日本で稀に見る大ヒットを記録したアニメ映画があります。海外でも英語版が上映されました。
その映画では、登場人物の女の子が別の男の子と入れ替わってしまい、周囲に気づかれないように気を付けながら通学するシーンが出てくるのですが、その際自分自身の普段の一人称を探るため、「わたし」「ぼく」「わたくし」「おれ」など様々な一人称を挙げていきます。
ですがこのシーン、単純な英訳では全て“I”になってしまうため、翻訳者は困り果ててしまったというのです。
これは海外では一人称が全て“I”で通じてしまうという、日本語との差異があるために起きた問題だと言えるでしょう。
他言語へと訳す方法として有名なものには、「意訳」と「直訳」がありますね。
それぞれ同じく文章を他の原語に翻訳する作業のことですが、直訳は単語と単語を置き換えるような形で翻訳を行っていくため、最終的な文章に「意味のズレ」が生じる場合があります。
では意味のズレとはどのようなものなのか、いくつか簡単な例文を見ながら確認していきましょう。
たとえばビジネス関連の実用書などで、「A little office chatter is fine」という言葉が書かれていたとします。
この英語を直訳すると、「オフィスの多少の会話は良いことです」と翻訳することができます。この訳し方でも大まかな意味は通じますが、まるで「オフィスが会話している」ようにも受け取れてしまうため、少し分かりにくい日本語になってしまいます。
ではこの違和感を解消し、より分かりやすい日本語へと訳すためにはどうすればよいのでしょうか?
意味合いを正しく把握できるように翻訳するのであれば、「オフィスで少し会話をすることはよいことです」とするべきでしょう。
この文章の場合は「オフィスの」と主語的に訳すのではなく「オフィスで」と場所であることが分かるように訳すべきですし、「少しの会話は」ではなく「少しだけ会話をする」と動詞として訳すことで、より日本語らしい表現になっていると言えます。
2. 翻訳作業で知っておくべき「差異」
英語の文章を直訳した場合に違和感を覚える最も大きな原因としては何でしょう?
英語はまとまった内容を言語化する場合は動作の対象となる名詞を中心に置き、その前後に修飾語を繋いで文章を構成していきます。
対して日本語は、「何をするのか」という動詞を中心に置いた上で、状況が分かりやすくなるようにその事態の成り行きに沿って言語化する傾向が強いため、文の構成そのものに差異が存在しているのです。
英語を自然な日本語に翻訳するには、まずはこのような英語と日本語の特徴の違いを知っておかなければいけません。
そもそも英語は日本語とは異なる文化圏における言語なのですから、その文章の中心となる発想も異なります。
そのことを踏まえた上で、翻訳作業で大切なのは「読み手に対して、原文の内容を分かりやすく伝えること」。そして分かりやすい文章へと仕上げるためには、直訳した文章を「不自然だ」と認識でき、より自然な形に修正できる高い日本語力が必要になるのです。
ただ単語と単語を紐づけて翻訳を行うのではなく、必要に応じて日本語の発想に合わせた変換を行う必要があります。
つまり、優秀な翻訳には、英語力だけではなく日本語力が求められるということに他ならないのです。
3. 日本語力を伸ばす方法とは?
この日本語力というのは、大きく分けると2つに大別することができます。一つは文章の作りを精査する「文法力」。もう一つは単語表現に関する知識、「語彙力」です。
たとえば語彙力が高ければ、必然的に多くの単語を知っていると言うことになります。つまり翻訳を行う際により多くの選択肢の中から最適な言葉をことができると言えるでしょう。
また文法力が高ければ聞いた英語を自然な表現で構成することができるようになりますから、読み手にとってより伝わりやすい形に翻訳することができるでしょう。
多くの選択肢の中から最適な表現や文法を選び取るということは、翻訳ではなく日本語で文章を書く上でもなかなか難しいものです。
しかし完璧な翻訳を行うためには、必要不可欠な能力であると言えるでしょう。
では、これらの能力は、どのようにすれば伸ばしていくことができるのでしょうか?
一番の近道は、様々な文章をなるべく多く読むことです。特に新聞や雑誌などの「プロの文章」を読むことで、それぞれの場面に最も合った表現を学び取ることができます。語彙力を向上させるためには、この上ない方法であると言えるでしょう。
同時にあらゆる媒体で、様々なジャンルの情報を仕入れておくことも重要です。一つの物事からさらに関連する内容を調べていくことで、翻訳を行う上で重要な「専門的な知識」についても身につけることができるでしょう。
新語や流行語などを知ることでも、自分自身の知識の層を厚くすることができますね。
「聞いたことはあるけれど、詳しい内容や使い方は知らない」というものに対して興味を持つことで、その言葉や物事に対する適切な表現についても自然と理解できるようになるのです。
4. 直訳ではない翻訳の難しさ
いかがだったでしょうか? もちろんご自身で勉強をして翻訳をすることは間違いではありません。ですが、“直訳”ではなく“翻訳”をすることの難しさについては、ご理解いただけたかと思います。
プロジェクトやビジネスを成功させたいのであれば、やはりプロの翻訳会社に依頼をするのが一番の近道と言えるのではないでしょうか。
お見積もりは無料です。お気軽に翻訳会社JOHOまでお問い合わせください。