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翻訳マネージャーコラム

不備のない特許翻訳のポイント

2017年03月21日

不備のない特許翻訳のポイント

ひとくちに翻訳といっても、その内容は様々です。
ビジネス上の契約書であったり、大ヒットを記録した文学作品であったり、日々の出来事を即座に伝えるニュース記事であったり……。
そして、それぞれの分野によって、求められる翻訳の技術もまた異なります。
今回は翻訳の世界においてもかなり特殊とされている特許文書の翻訳について、ご説明します。

1. 難しい特許申請書類の作成

特許の権利書・申請書というのは、自分の発明に関する権利を主張するための法律文書です。
その内容は大きく分けると2つに分けることができます。
自分自身が特許権を持っていることを主張するための「特許請求の範囲」と、それを担保するための説明書ともいうべき「特許出願明細書」から成り立っています。
他の法律文書と比べても、自身の発明を言葉で説明し、正当な権利を主張する「特許請求の範囲」は、かなり特殊なものであるといえるでしょう。
特許関連の文書を日本語から英語へ、もしくは英語から日本語へ翻訳しようとした場合、その特殊性は言語の壁以上の障害になるということは想像に難くありません。
したがって、単に英語力が高ければ、しっかりと訳せるというものではないのです。

最大の問題は、特許関連の書類には独特の「造語」が存在することでしょう。
一般的な法律関係の書類であれば、原則としては一切の意訳をせずに原文に忠実に訳していく「直訳」の能力が求められます。
しかし、特許文献ならではの「造語」が存在してしまっているために、直訳する能力だけでなく、それぞれの国の法律に関する専門知識も持ち合わせていない限り、文章の内容を正しく相手に理解してもらえるように和訳・英訳を試みるのは難しいのです。
実際に起こっている問題としては、国内外を問わず、記載の不備による申請の不受理が多数あることが挙げられます。
これは日本語で書かれた原文そのものが不十分であったために、英訳したものが国外で却下されてしまうようなケースもあるのです。ただ、それ以上に多いのが、日本語ではしっかりと記載していた内容が翻訳する際に誤解されてしまい、結果として英訳版では申請に必要情報が抜け落ちた形になってしまったという状況なのです。
もちろん英訳されたものも、英語そのものとして、文章としては成り立っていたでしょう。
とはいえ、それが「法律文書」という特殊な書類である限り、ほんの一部分に不備があっただけでも、看過されることはありえないのです。

2. 特許申請の翻訳に不備があると……

そもそも特許の申請というものは、極めて重要なものです。
なぜならそれは何かしらの発明において、「私が最初に開発した」ということを公的に宣言するものであり、他者に対して自らの権利を主張するための文書なのですから。
もしあなたが自分自身の発明について特許を主張し、それが仮に書類上の不備によって申請が通らなくなってしまった場合、どのように対応するでしょうか?
当然、不備のあった該当箇所を修正し、再度申請を行うとするでしょう。
ところが、もしも再申請までのわずかな期間に、他の人が「私のほうが最初に開発したのだ」と同じ内容を申請したら……。
こうした誤訳による申請不備については、基本的には当該の国や地域の裁判所において判断されるようです。
そこで「一度は申請しているのだから、自分にこそ権利がある」とあなたが声高に主張したとしても、権利は最初に申請が認可された他の人に属する場合すらあるのです。

3. 特許書類翻訳のポイント

日本語と英語との間で文章の翻訳を行うと、どうしても「原語特有の表現」というものが出てきます。
たとえば、日本語の比喩や慣用句であったり、「一方」「他方」というような難しい言い回しなどが、特有表現に該当するでしょう。
もちろん全く翻訳できないわけではありませんが、英語にするとかなり遠回しな表現になってしまい、結果として意味が通らないものになりかねません。
文頭に存在する「接続語」も、そのまま英訳することは難しいといえます。法律や技術マニュアルなどの翻訳では、日本語の接続語に該当する部分は、むしろ訳さないほうがよいという意見もあるほどです。
1語1語のニュアンスを読み取り、英語に置き換えようとすると、どうしても英語圏の人々が使用する英文とは異なる表現になってしまうことがあるのです。

また、日本語の法律関係の文章には、「~等」といった表現が多用されています。
「当該のプログラム等を含む」「金・銀等の鉱石」「食料品、嗜好品等の輸入」といった具合に、これらの「等」には一体どんな種類のものがどの程度含まれるのか、また、含まれないものは何なのか、曖昧で判断がつきません。
特許文書の翻訳においては、こういった些細な部分の誤訳、あるいは遠回しな表現によって、原文の内容が伝わりづらくなってしまうことは避けるべき、とされています。
あくまでも特許に関する書類は法律文書であり申請書類なのですから、内容は簡潔にまとめ、なおかつ読み手側が作成者の意図するところを即座に読み解くことができるものが求められるのです。

4. 特許翻訳は専門家に依頼しよう

求められるスピード・内容の正確さ・文書の特殊性と、どの観点から見てみても特許文書の翻訳については、自分自身もしくは翻訳者個人で対応することはあまりお勧めできません。
もし海外に対して特許の申請が必要になった場合は、やはり専門家に相談したほうがよいかと思います。
現在は日本国内に数多くの翻訳会社が存在し、なかには特許翻訳を専門にサービスを提供している翻訳会社も存在しています。
特許の申請ができる状況というのは、それは世界的に見てもかなり大きなチャンスです。
そのチャンスを、些細なミスで棒に振ってしまうようなことだけは、絶対に避けなければいけません。
翻訳会社によっては、書類の英訳だけでなく内容の正確性や正当性、海外での申請において不備がないかどうかを同時に確認してくれるというところもあります。
特許で千載一遇のチャンスを掴むためにも、申請に万全の体制で臨めるよう、ぜひ自身に合った翻訳会社を選んでください。

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