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翻訳マネージャーコラム

特許申請に必要な翻訳と特許翻訳

2017年03月18日

特許申請に必要な翻訳・特許翻訳とは

特許翻訳というものをご存じでしょうか?
主に、「特許出願明細書」を海外に向けて出願する際に行われる特殊な翻訳業務のことです。
この特許出願明細書というのは、特許を取得する際に特許庁へ提出する書類のひとつで、たとえば自らの発明の内容を詳細に説明し、保護を受けたい発明の権利範囲を定義するための文書です。
そのため、発明の内容を説明するための「技術文書」としての役割と、権利書という「法律文書」としての役割を同時に担っている、特殊な文書であるといえるでしょう。
今回はこの特許翻訳について、ご説明いたします。

1. 特許申請とは何か

法律書類というものをご覧になったことがあるでしょうか。
書式や用いる表現に至るまで細部にわたって決まりごとがあり、その記載内容に不備があれば当然、申請は許諾されません。
特許文書についても同様で、日本の特許庁に申請するものについては日本語で記載しますが、海外の特許庁に申請する際にはそれぞれの国が定めた言語に翻訳する必要があるのです。
当然、翻訳するなかで少しでも漏れが生じたり、または意味の通らない訳となっている場合も「書類の不備」として扱われるので、内容によっては特許を取得できなくなってしまうこともあるでしょう。
技術内容を正確に翻訳するだけでなく、法律文書としての決まりごとも遵守して初めて、特許翻訳という作業は完遂できるのです。

表現についても細部にわたる注意が必要です。
たとえば、特許を申請した発明の、権利範囲はどこからどこまでなのか。その範囲を自身で不用意に狭めたり広げてしまったりしてはいけません。
仮に、本来の原書には指定されていない事象について権利を主張していた場合、海外では「初めからその権利は存在していなかった」として処理されてしまうからです。
一方、自身で狭めた範囲を指定してしまった場合には、後に何かしらの権利侵害を受けたとしても、正当な範囲での権利を主張することはできなくなるでしょう。
また、特許に関する翻訳作業については特許出願明細書のほかにも、特許庁からの通知の翻訳、それに対する応答案の作成等も挙げられます。
翻訳については、日英翻訳が求められることが多いようです。

2. 国際的な特許申請方法

こうした国際的な特許申請については、PCT国際出願制度というものが定められています。
これは、ひとつの出願願書を一定の条約に従って提出することにより、PCT加盟国すべてに出願したのと同等の効果が与えられるという、特許協力条約に基づく出願制度です。
もしもひとつの発明についての特許の申請を多くの国に対して出願する場合、それぞれの国に定められた書式が存在するため、手続きは非常に複雑なものになります。
また、その発明に対して特許権を付与するかどうかの判断は、原則として各国の特許法に基づいて行われます。
つまり特定の国での特許を取得するためには、その国のルールに沿った書類を作成し、一つひとつの国に対して直接特許出願を行わなければならないのです。
しかし、グローバル化が進む現代においては、以前にも増して特許を取得したい国の数が増加する傾向にあります。そのすべての国に対して個々に特許出願を行うことは非現実的ともいえるでしょう。
同時に、特許というものは先願主義(誰が最初に発明したかに関わらず、最初に特許出願を行った者に特許権が与えられる制度)に基づいていますから、自らの発明の権利を主張するためには、一日も早く出願することが重要になってきます。
ところが、出願日を少しでも早くしようと考えたとしても、国によって言語が異なるため、すべての国に対して同時に出願願書を提出することは難しいのです。

3. PCT国際出願制度とは?

PCT国際出願はこのように複雑な手続きや、非効率的な慣例を改善するために設けられた国際的な特許出願制度です。国際的に統一された出願願書を自国の特許庁に対して提出すれば、その時点ですべてのPCT加盟国に対して「国内出願」を出願したのと同等の効果を得ることができます。
つまり日本の場合には、日本特許庁に対して国際出願願書を1通だけ提出すれば、PCTの全加盟国において「特許出願」が完了したことになるのです。
また、PCT国際出願には手続きを簡素化するという目的だけでなく、独自の制度も用意されています。国際出願をすると、その発明に類似するような発明がこれまでに出願されたことがあるかどうかの国際調査が行われます。
さらに、出願した発明の進歩性や新規性などが、特許取得に必要な要件を備えているかどうかという審査官の見解も作成され、出願人に提供されることになるのです。
希望すれば、特許取得のための要件についての国際予備審査を受けることもできます。
これらの制度を上手く活用することで、各国での特許取得の可能性を精査することができ、厳選した国においてのみ手続きを行うことで、コストの削減と適正化を図れるのです。

4. 特許申請に必要な翻訳業務

このPCT国際出願に関しては、実は日本特許庁に提出する書類は、日本語で書かれたものでも問題ありません。
ただし、注意しなければならないのは、PCT国際出願はあくまで国際的な「出願」手続きであり、その発明が特許として認められるかどうかは、各国特許庁の審査に委ねられているという点です。
各国の特許庁に審査を依頼する際には、国際出願した内容を各国の国内手続きに係属させるための手続きが必要となります。
この国内移行手続きを行うためには30カ月以内に翻訳した翻訳文を提出し、その国が定めた手数料を支払う必要があるのです。
最初の出願自体は日本語で書かれた書類のみで進められたとしても、最終的にはそれぞれの国の定めた言語への翻訳を行わない限り特許を取得することはできないということです。
せっかく世界各国に特許の申請を行っても、それが自らの権利の取得につながらないのでは意味がありません。
そのため、より円滑な申請を行うためには、PCT国際出願を進めるとともに、原文の翻訳を翻訳会社に依頼することが得策といえるでしょう。
30カ月の猶予期間の間に自らで翻訳を完了させたとしても、そのなかに誤訳があれば権利は正しく保護されません。
特許を獲得するためには、すべての文書が重要書類であることを認識し、翻訳会社に仕事を依頼しながら、リスクを少しでも減らしておいたほうがよいでしょう。

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