映像翻訳には語学力・映像知識・技術が必要
文書とは異なる映像翻訳の難しさ
2017年2月26日、アメリカで“映画の祭典”アカデミー賞が行われ、作品賞は『ムーンライト』が獲得。この作品は日本で4月28日から公開予定です。
また、史上最多ノミネートで話題となった『ラ・ラ・ランド』は、アカデミー賞直前の2月24日から日本で公開がスタートしていました。
こうした映画だけでなく、『ビバリーヒルズ』シリーズや『SATC』シリーズなどのアメリカ・ドラマ、ここ数年では韓国ドラマなど、数多くの映像作品を日本で観ることができます。
逆に『君の名は。』のように、日本の作品が海外でヒットすることも増えています。
ただ、映像はどこの国で作られたものであっても、観れば理解できるかもしれませんが、やはり言語の壁は存在します。そのため、海外の映像作品には必ず字幕や吹き替えといった処理が施され、日本で公開されているのです。
この字幕や吹き替えにも、翻訳会社が利用されていることをご存じでしょうか。今回は、あまり知られていない映像翻訳についてご紹介します。
1. 字幕や吹き替えのための音声翻訳
映像翻訳のひとつに、海外の映画やドラマ、ニュース番組など、外国語が使われている映像につけるための、字幕や吹き替えの翻訳があります。
翻訳のジャンルには、他にも法律関係の翻訳や金融関係の翻訳、医療関係の翻訳もあります。すが、これらの翻訳と映像翻訳とでは大きな違いがあります。
それは、文書からの翻訳ではなく、音声からの翻訳だということです。
法律関係の翻訳では、契約書の翻訳などを行います。金融関係の翻訳では市場のレポートなどを翻訳しますし、医療関係の翻訳では症例の報告書などを翻訳します。いずれも専門家が作成した文書を翻訳することがほとんどです。
ところが、映像翻訳はまず用意された映画やドラマの映像を観て、そのセリフを聴きながら翻訳していかなければならないのです。
つまり、外国語を読む力に加え、聴き取る力も必要とされるのです。
もちろん語学力だけでなく、各分野の専門知識や翻訳するための技術も必要となります。
翻訳と聞くと、単に「外国語を日本語に訳している」と思われることもあるようですが、実際は翻訳の種類によって、翻訳の仕方や必要な知識などが大きく異なるのです。
2. 映像翻訳に求められる「聴き取る力」
映像翻訳で必要となるのは外国語を聴き取る力です。日本人の多くは、昔から英語の読み書きはできても、聞いたり喋ったりとなると難しい、という人が多いものでした。
英語に限らず言語の聴き取りは、辞書や翻訳サイトで調べてどうにかなるものではありません。何度も何度もその言語に触れることで、ようやく聴き取ることができるようになります。
さらに、同じ言葉でも、誰もが同じように発するとは限りません。学校の英語の授業で使われた音声CDのように、聴き取りやすい発音ではないのです。日本人でも、地域によって方言があるように、アメリカでも地域によってイントネーションなどが違いますし、人によってしゃべり方に癖もあるでしょう。
また、映画やドラマであれば、演出によって音声が加工されるケースもあります。となると、さらに聴き取ることが難しくなります。
映像翻訳を行うには、外国語を聴き取る力、それも非常に高レベルなスキルが必要となるのです。
3. 外国語のセリフの尺に合わせた翻訳
映像翻訳には言葉を聴き取ることに加え、さらに特有の難しさがあります。それは、外国語でしゃべっている時間(尺)に合わせた日本語への翻訳が必要である、ということです。
たとえば、映画に出てくるセリフを翻訳した字幕は、登場人物がセリフをしゃべっている間のみ表示されます。
しかし、役者がしゃべっているセリフを正確に翻訳して字幕にすると、日本語のほうが長すぎて、字幕が長文になってしまうことがあります。正確な意味が表示されていれば問題ないように感じますが、あまりに長すぎると映画を観ている人がその字幕を読み終わる前に、次の字幕へ切り替わってしまうことでしょう。
そこで映像翻訳では、正確な意味の字幕を作りつつも、セリフの尺に長さに納めなければなりません。セリフ中の重要なポイントを字幕に取り込む技術が必要となるのです。
同じ映像分野の翻訳でも、吹き替えになると、また別の難しさが加わります。字幕はセリフの長さに合わせればよいのですが、吹き替えの場合は役者の口の動きにも合わせなければなりません。もし、吹き替えのセリフが長すぎれば、映像の役者がしゃべっていないときも吹き替えが聞こえてくることになり、観ている人は違和感を持つでしょう。
そのため、吹き替えの翻訳を行う場合には、役者の息遣いにも注意して翻訳を行うなど、独特な技術も必要です。
4. 字幕の翻訳が作品の質を左右する
映像翻訳には語学力だけでなく、映像作品に関する知識や、特有の技術が要求されます。そのため、映像制作会社も翻訳を専門の翻訳会社に依頼することが多くなっています。
映画であれば、最近は海外と同時に公開される作品も多く、字幕や吹き替えの翻訳も作業スピードが要求されます。翻訳会社も映画の配給会社や制作会社と密にコンタクトを取りながら、翻訳作業を進めなければいけません。
また、映像翻訳は映画だけでなく、ニュース番組などでも必要になります。映画とニュース番組では表現方法も変わりますし、表現方法が違えば、字幕や吹き替えの内容も変わってくるでしょう。
同じ映像翻訳でも、翻訳する映像によって異なった翻訳の仕方が必要です。それだけに、映像翻訳を専門としている翻訳会社も存在しているほどです。
あまり経験がなかったり、スキルに乏しい翻訳者が字幕や吹き替えの翻訳を担当すると、それだけで映像作品全ての質が下がってしまいかねません。海外の映像作品においては、字幕や吹き替えの質が、作品全体の質を左右する場合もあります。
翻訳会社には、映像専門の翻訳者だけでなく、翻訳物のチェックを行う各分野の専門家やネイティブチェック担当者もそろっています。
質の高い映像作品を作り上げるためには、質の高い翻訳が必要です。映像翻訳は、経験豊富なプロフェッショナルの翻訳会社にご相談ください。
お見積もりは無料です。お気軽に翻訳会社JOHOまでお問い合わせください。