日本の謙遜表現は、英語圏ではなかなか理解しがたいものです。
英語翻訳と日本の謙遜表現
「いやいや、僕なんか全然まだまだですよ……」
「いやぁ、ウチの家内は料理が下手で……」
「ウチの息子はホントにダメで……」
日本人というのは、自分の家族や身内の人間を褒めることを極端に苦手としています。
ときには「謙遜」として、わざと自分の家族をけなすようなことを言う場合もあります。
このような謙遜は、日本では当然のことかもしれませんが、果たして海外の方にも受け入れられるものなのでしょうか?
今回は英語と日本語それぞれの「特性」を踏まえ、英訳・和訳を行う際に注意するべきポイントをご紹介します。
1. 日本人の謙遜は海外で通じない?
私たち日本人は、異文化と触れ合うこと自体に不慣れだと感じることがあります。
しかし、翻訳者という仕事は、単に二カ国語に堪能であるというだけでは務まらず、それぞれの国の文化にも精通していなければなりません。
そもそも言語とは、その言葉を使っている国の文化を表すものであり、必ずしも文法だけでは表現できないニュアンスが含まれているからです。
たとえば、日本人の「謙遜」という概念は、英語圏の人にとってはなかなか理解しがたい日本の文化のひとつでしょう。
海外の人からすれば、「どうして家族をそんなに悪く言うのだろう? もしかしてこの人は、人格的に何か大きな問題を抱えているんだろうか?」と思われてしまいかねません。実際、そのように思われて、弁護士や精神科医を紹介されたという人もいるようです。
また、ビジネスの世界においても目上の方から褒められたとき、国内では「自分なんてまだまだです、恐れ多い」と謙遜することが美徳とされています。ところが、この謙遜も海外においては、とても失礼な行為にあたります。
「褒めているのに『それは違う』と言われる。つまり、自分からの評価など欲しくないということか」と、あらぬ誤解を生んでしまうことすらあるのです。
2. テクニカル・ライティングの必要性
このように、日常会話だけ取っても、様々な誤解を招く可能性があるのが言語の難しい部分です。では、これがビジネスにおける契約書や提案資料だった場合はどうなのでしょうか?
ビジネスの世界では、「テクニカル・ライティング」と呼ばれる英文の記述方式が必須となっています。これは、日本国内では工業英語や技術英文と呼ばれているものです。
感情や推測を交えず読み手に正確に伝えるため、事実を端的に表記する技法で、主に医療業界や法律関係、あるいは工業製品のマニュアルなどに用いられています。
一般的な知名度こそ高くはないものの、テクニカル・ライティングによってビジネスの世界では不要な誤解を招く要因を減らすことができ、より円滑な業務の遂行につながっているのです。
ではなぜ日本国内の小中学校では、このテクニカル・ライティングを義務教育課程で教えないのでしょう?
その理由のひとつは、現在の英語教育が会話重視の内容となっているため、正確に事実を相手に伝えるための技法=テクニカル・ライティングの技法が、その教育方針にそぐわない面もあるからではないでしょうか。
たとえば、取り引き先の相手との会話や提案、プレゼンテーションにおいては、ただ単に事実だけを伝えるのでは悪い印象を与える恐れがあります。特に初対面の相手ならば、面食らってしまうこともあるでしょう。
テクニカル・ライティングは、まず文章を作成するうえで必要な技術であり、文章で正確に事実を相手に伝えることができるようになれば、きっと対話でも役に立つことでしょう。
しかし文章を書く、という行為を通さず、テクニカル・ライティングをそのまま対話に持ち込むことは、学校教育レベルでは難しいのかもしれません。
3. 謙遜表現を英訳することは難しい
謙遜を用いた「日本語的な」翻訳もダメ、かといってテクニカル・ライティングは難しい……。
では、私たちが日本語の文章を英語に訳す必要に迫られたとき、どの方法を選択すればいいのでしょうか?
そのひとつは、「自分自身で翻訳するのを諦めること」です。
専門的な文章を自己流で翻訳しようとすればするほど、必ずどこかで「ほころび」が生じてしまいます。翻訳したい文章が、自分自身で購入した商品の説明書であれば、インターネット上の翻訳サイトなどを駆使すると、なんとか内容を理解できるところまでたどり着けるかもしれません。
ところが、これがビジネスの政界や法律・医療に関わる文章となれば、同じように自分自身で、もしくは翻訳サイトを使って正確な翻訳を行うことは難しいでしょう。
特に、日本人にとっても難しい謙遜表現を英語に訳すことは、不可能に近いかもしれません。なにせ他言語に同じような謙遜表現や、その概念が存在しないのですから。
ただし、対話にせよ文章にせよ、相手に対して敬意を払いながら、事実を正確に伝えることは重要です。そんな翻訳を行うために、翻訳会社が存在しているといってもよいでしょう。
4. 日本語は最も難しい言語のひとつ。だからこそ……
翻訳企業では依頼された文章を様々な角度から検証し、最も適切な文章へと翻訳します。
また、多くの翻訳サイトのような「機械翻訳」「自動翻訳」ではないので、ご依頼の際にその文章の用途を伝えることで、より適した形に調整することもできます。
企業間の契約書であれば、それぞれの国の法律に抵触する恐れはないか調査することもありますし、プレゼンテーションのスピーチ原稿であれば、相手の文化に合わせて失礼のない言い回しを選んだりと、細部に至るまで入念にチェックを行い、最良の形で納品するのが翻訳会社の仕事です。
もちろんプロフェッショナルに仕事を依頼するためには、それに見合った費用が必要になります。しかし、たとえば大企業では、後々になってトラブルに巻き込まれてしまうリスクを回避するために、自社に翻訳の部門を設立しているケースすらあるほど、翻訳作業は重要視されています。
謙遜表現に代表されるように、日本語は世界のなかでも難しい言語のひとつとされています。それだけに、正確な翻訳が必要な場合は、ぜひプロの翻訳会社にご相談ください。
お見積もりは無料です。お気軽に翻訳会社JOHOまでお問い合わせください。