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翻訳マネージャーコラム

翻訳サイトとして政府,各省庁のサイト利用

2017年02月21日

翻訳サイトの活用②政府、各省庁のサイトを利用する

翻訳サイトとして政府,各省庁のサイト利用

最近は「Weblio翻訳」をはじめ、多くの翻訳サイトが専門用語に関するページを作成しています。
ほとんどは日本語から英語への翻訳ですが、日々それだけ英語翻訳の需要が高まってきているということでしょう。
掲載されている専門分野は、医療、法律、金融、ビジネス関連など多岐にわたっています。
そこで「専門的な文章の翻訳で最も役立つ翻訳サイト」を知りたい方も多いと思いますが、用語はともかく長い専門的な文章を、正確に翻訳できるサイトは、なかなかありません。
ただし、「用語はともかく」と書いたとおり、専門用語の英語表記を調べることは、比較的容易ではないでしょうか。
その方法とは、日本の政府・各官公庁のホームページを利用することです。
今回は翻訳における政府・官公庁ホームページの利用法、役立つ用語集から興味深いサイトまでご紹介します。

1. 政府・官公庁ホームページの英語版を利用する

内閣府大臣官房政府広報室が運営する「政府広報オンライン」をはじめ、首相官邸、内閣府、法務省、総務省、財務省、金融庁、国税庁、警察庁といった官公庁のホームページには、必ず英語版があります。
国際社会に向けて、日本政府・官公庁の取り組みを海外に知ってもらうための施策ではありますが、この内容が充実しているのです。
翻訳会社に依頼される翻訳物は専門的な内容が多く、医学・薬学分野、法律分野(契約書を含む)、特許、機械・工業、IT、不動産・建築、教育、映像など広い分野の知識が求められます。
各ジャンルの専門用語、専門的な翻訳に関する書籍は多数出版されているものの、インターネット上で手軽に検索できる翻訳サイトは、それほど多くはないのが実情です。
そんななか、やはり政府・官公庁の日本語版ホームページには各分野の専門用語や公式発表、様々な資料が掲載されていいます。その日本語版サイトと英語版を比較すると、専門分野の翻訳に役立つ知識が得られるのです。
もちろん英語版はすべて英語で書かれているため、英語能力を身につけていなければ内容を理解するのは難しいかと思いますが、英語翻訳を仕事としている翻訳者であれば対応できるでしょう。
特に各サイトで充実しているのは、部署・役職名の英語表記です。私設サイトではなく公的機関の英語版ですので、翻訳物への引用などにも役立つはずです。

2. 用語から文章まで、これだけある英日対応ページ

政府・官公庁ホームページの日本語版と英語版を対比させながら読むと、翻訳者としても勉強になりますが、当然ですが別ページなので読むのが大変という点は否めません。
しかし、そこは日本の政府・官公庁。なかには専門用語から文章まで、果てはデータベースとして英語と日本語を対応させている=同じページ内に英語表記と日本語表記が併せて掲載されているサイトもあるのです。
そのなかか、いくつか興味深いサイトをご紹介しましょう。

日本法令外国語訳データベースシステム
http://www.japaneselawtranslation.go.jp/
法務省が開設した、日本の法令の英訳サイトです。検索方法は「法令検索」、「辞書検索」「文脈検索」の3種類があります。いずれも検索キーワードに関連した法令が表示され、英訳文章をPDFなどの形式でダウンロードできるという、非常に便利なサイトです。

厚生労働統計調査名英訳名称一覧
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/eiyaku.html
厚生労働省が行っている各種統計調査のデータ一覧と、その英語表記が並べてまとめられています。それぞれ個別に、日本語版と英語版が表記されているわけではないのですが、調査の名称を知りたいとき、または対比させながら読むためにも役立つ一覧表です。

銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)
http://www.fsa.go.jp/news/19/ginkou/20080627-4/01.pdf

金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)

http://www.fsa.go.jp/news/19/ginkou/20080627-4/02.pdf

保険業法(平成七年法律第百五号)

http://www.fsa.go.jp/news/19/ginkou/20080627-4/03.pdf
金融庁が公開している、各法令の英訳です(すべてPDF形式)。中身はすべて英日対比、日本語→英訳の順に掲載されています。金融分野に限らず、あらゆるビジネスジャンルで知っておいて損はない法令ばかりなので、役立つこと間違いなしです。

警察用語英訳一覧
https://www.npa.go.jp/keidai/keidai.files/zaishu.pdf
警察庁が公開している、警察用語の英訳です(PDF形式)。日本の法律(刑法)で定められた罪種など、一般的になかなか使うことは少ないかもしれませんが、なかには外国人向けの法律や、不動産業界で使われるような用語の英訳も掲載されているので、一見の価値アリ。

マイナンバーについて
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/otherlanguages.html#about
2016年1月より、行政手続きにおいて利用が始まったマイナンバー制度。所管の内閣官房社会保障改革担当室によるホームページには、その詳細が掲載されていますが、最もすごいのは外国人向けの解説ページです。もともとホームページ自体が英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語に対応しているうえ、マイナンバーの解説はさらに他の21言語に対応しています。ロシア語、アラビア語、東南アジアの言語……各言語の翻訳の参考になるでしょう。

3. 翻訳で利用するために注意してほしいこと

こうした政府・官公庁のサイトを利用する際には、注意しなければいけないことがあります。
特に「日本法令外国語訳データベースシステム」や金融庁の各ページでは、これらはあくまで「参考資料」であると明記されています。
法的効力を持つのは日本語の原文であり、掲載された英訳は参考として使うのみで、英訳の文章が法的効力を持つものではない、ということです。
また、それぞれ引用・転載・リンクなどの規約が異なりますので、よく理解したうえでご利用ください。

さて、情報社会の現代では、こうした便利なサイトがどんどん増えています。
昔からある個人作成のデータベースや、政府・官公庁による用語集・文例集だけでなく、証券会社が証券用語の英訳ページを作っているほどです。
とはいえ、用語や文例を知っているからといって、必ずしも正確な翻訳ができるとは限りません。これらを資料として利用するには、大変便利ではありますが、どんなジャンルでも専門的な文章になればなるほど、より高度な言語能力、専門用語、独特な言い回しなどの知識が要求されます。
翻訳者はそれだけのスキルを身につける必要がありますし、翻訳会社はそれだけのユーザーのニーズに応えていかなければいけません。
便利なサイトが増えているからこそ、翻訳者と翻訳会社には、プロフェッショナルな仕事が求められているのです。

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