多言語間の翻訳において文法が与える影響
他言語間の翻訳①文型・文法について
1. なぜ英語の授業は文法から始まるのか
翻訳の難しい点として、よく「文法の違い」が挙げられます。
日本では今でこそ小学校で英語の授業が行われているところもありますが、以前は英語といえば中学校から習い始めるものでした。
その際、まずは「文は大文字で始める」「文の最後はピリオドをつける」といった基本的な英語のルールからスタートし、英文を形成する5つの文型=5文型について勉強します。
※ただし、現在は英語の授業も「コミュニケーション重視」になっており、文型について学ばないところもあるようです。
もともと、なぜ英語の授業で文法を学ぶかといえば、それは日本語と英語は文法がまったく異なり、その違いを学ぶためとも言われています。
それは日本語と英語だけでなく、英語と他言語……たとえば中国語や韓国語などにも同じことがいえます。
翻訳会社への仕事の依頼で、最も多いのは英語からの翻訳、もしくは英語への翻訳ですが、もう一方の言語が必ずしも日本語であるとは限りません。
最近は中国語と英語、韓国語と英語、といったように他言語間(日本語以外の言語)の翻訳も多くなっています。
そこで今回は、文型と文法という観点から、他言語間の翻訳についてご説明したいと思います。
2. 英語・中国語の文型・文法の違いは?
英語と中国語の文型を比較するために、まずはひとつの例をご紹介しましょう。
英語
I love you.
中国語
我爱你 ※簡体字
日本語で「私はあなたを愛している」という言葉を、各言語に訳したものです。
英語はいわゆる第3文型=SVOの形です。
中国語も、我(私=S)、爱(愛する=V)、你(あなた=C)と第3文型になっていますね。
ちなみに日本語は、英語の文型に当てはめると「私は」=S、「あなたを」=0、「愛している」=V、とSVOがまったく違う順番になります。
では英語と中国語、他の文型だとどうでしょう?
英語
We make America great again.
中国語
我们再次使美国伟大
英語のほうはSVOCにagainというM(副詞句)がついた、いわゆる第5文型になっています。対して中国語は……
我们(=we)、再次(=again)、使(=make)、美国(=America)、伟大(great)
と、基本的に文型は同じような形ですが、again=再次、つまり副詞の位置が異なっています。
実は、英語と中国語の文型は似ているところが多いと言われています。むしろ英語・中国語と日本語の文法が違いすぎているのかもしれません。
この文例でいえば、again=再次……副詞句は、英語は文末に置くことが多く、中国語はその副詞がかかる動詞や形容詞の前に置く、という文法の違いがあるのみです。
3. 英語と中国語の文型を比較してみると……
まずはここで英語の5文型と、各要素についておさらいしておきましょう。
[英語の文型]
S=主語、V=動詞、C=補語、O=目的語
第1文型 S+V
第2文型 S+V+C
第3文型 S+V+O
第4文型 S+V+O+O
第5文型 S+V+O+
これがいわゆる英語の5文型です。この形にならって、中国語の文型をわけていくと、実は中国語も同じように5文型に分類することができるのです。
[中国語の文型]
第1文型 S+V
第2文型 S+V+C
第3文型 S+V+O
第4文型 S+V+O+O
第5文型 S+V+O+C
ただ、中国語の場合は、いくつか英語と異なる文法があるので、すべてが同じというわけではありません。
一部の動詞は二つの目的語をとることができる
動詞には動詞や動詞句を目的語にとることができる
これが中国語の主な特徴でしょうか。ほかにも「時間」「場所」を表す言葉の位置や、助動詞や数量詞の位置が違う場合もあります。
また、同じ意味でも「書く」場合と「話す」場合でも異なってきます。
とはいえ、英語の授業で最初に文法を習う理由のひとつとして、「日本語と英語の違いを学ぶ」という点を挙げましたが、同じ文法・文型という観点で見ると、英語と中国語が似ている部分があるということがわかるのも、文法の面白さといえるでしょう。
4. 英語と中国語の翻訳で注意すべき点は?
英語はアルファベットを使った言語であり、中国語は感じを用いた言語ですが、それでもこれだけ文型に似た部分があります。
となれば、英語と同じくアルファベットをベースとした言語……フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語も、日本語よりも英語の文法をベースに考えると、わかりやすいかもしれません。
特に、日本語で生まれ育ち、外国語として英語を中心に学んできた日本人ならなおさらでしょう。なかでも現在、英語と中国語の翻訳は需要も高まっており、それぞれ対応できる翻訳者さんも多いかもしれません。
しかし、これが専門的な書類、ビジネスで使われる契約書となると、少し話は変わってきます。
日本語を使わない、他言語間の翻訳であればあるほど、スピードと正確さ、さらに専門性も必要になってきます。英語と中国語でいえば、似た部分も知っておかなければいけないし、また違いも把握しておく必要があります。
一番難しいのは、専門用語でしょう。日本は漢字、平仮名、カタカナ、アルファベットと様々な文字を使う国です。しかし英語ではアルファベットのみ、中国語では漢字しか使われません。アルファベットの専門用語を、中国語の漢字でどう書くのか、これには多様な専門知識が必要です。
それだけに、日本語以外の言語であればあるほど、専門的な翻訳を熟知している翻訳者さんにお願いしたり、またその言語やジャンルの知識が豊富な人にチェックしてもらうことも必要になります。
他言語間の翻訳を依頼する場合は、翻訳会社選びのポイントとして、こうした点にも着目してみてください。
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